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1996年に医師、美術家、ファミリーケア・アドバイザーがチームとなって実践研究をスタートさせました。医療・美術・福祉の壁を越えたアプローチが特徴の臨床美術は、介護予防事業など認知症の予防、発達が気になる子どもへのケア、小学校の特別授業、社会人向けのメンタルヘルスケアなど多方面で取り入れられ、いきいきと人生を送りたいと願うすべての人へ希望をもたらしています。
脳の活性化には、視覚的、直感的な作業や芸術活動が効果的であることは知られていますが、ただ絵を描けばよいわけではありません。美術家の中には「創作する際に普段とはちがう物の見方をする」と言う人がいます。これを脳科学を用いて理論付けたのがベティ・エドワーズ<Betty Edwards(米)>の研究です。エドワーズは、「ほとんどの人は左脳を使って絵を描いている」「右脳を使って描かせることにより才能とは関係なく、急速に絵が描ける」と説明しています※。※参照元:ベティ・エドワーズ著「脳の右側で描け」
臨床美術はこの理論からヒントを得て、さらに、五感を刺激し感じる事によって美術表現が可能になることを実践しています。
作品を飾ったり身につけたりすることで後々まで気持ちを新たにしたり、家族とのコミュニケーションが増えます。その人自身が表れた作品は、形に残る「自分史」にもなります。
自己を開放して制作した過程や作品が、周囲に受け入れられることで自信を回復し、積極性が生まれてきます。
創作には自己実現の喜びがあります。
年齢や症状にかかわらず、みずみずしい感性が失われていないことを、自分自身、そして家族も共に感じることができます。
参加者とその家族が現状を受け入れながらも、再び希望を持って生きることができた、との声を多くの方々からいただいています。